ロンドン交響楽団
BBC交響楽団
シカゴ交響楽団
東京フィルハーモニー交響楽団
ダブリン・フィルハーモニック・オーケストラ
聴衆の拍手に応えるオーケストラの様子
ステージ近傍上部から見下ろしたオーケストラの様子

オーケストラ/: orchestra[注 1][注 2])は、音楽の一種である管弦楽(管弦楽曲)、または、管弦楽曲を演奏する目的で編成された楽団(管弦楽団)を指す。日本語では後者の用法が主である。

概要

明治時代に雅楽の用語から転用された「管弦楽」が orchestra の日本語訳(和製漢語)となっており、また、「管弦楽」もオーケストラと言う。

交響曲を演奏する楽団を英語で symphonic orchestra (日本語では英語風にシンフォニック・オーケストラ、あるいは、前半部のみドイツ語風にシンフォニー・オーケストラ/管弦楽団)というが、これは「交響楽団」と訳される。ただし英語で philharmonic orchestra(日本語では英語風にフィルハーモニック・オーケストラ、あるいは、前半部のみドイツ語風にフィルハーモニー・オーケストラ/管弦楽団)との名称もある。philharmonic は「音楽を愛好する」という意味のギリシャ語に由来し、「交響楽団」と意味が異なる。ドイツ圏ではPhilharmoniker、Symphoniker、英語圏ではphilharmonicなどのみでorchestraを含まない名称の管弦楽団も多数存在する。

両者の違いは、楽団の維持費が寄付によるかどうかであるとする説もあるが、現状ではオーケストラの名称として曖昧に使用されている。ポピュラー音楽と比べ、演奏に必要な楽員の数が圧倒的に多いため、その存立には演奏収入以外にも経済的根拠が必要であり、それが富裕層の私的財産なのか、公的な補助金なのか、市民らの寄付なのかという違いもあり、名称にまで影響を与えている。

室内楽団や室内オーケストラ(chamber orchestra)が1声部1人を基本とするのに対し、一般的なオーケストラは1声部を複数で担当し、通常、指揮者により統制されて演奏する。各声部は弦楽器管楽器木管楽器および金管楽器)・打楽器があり、さらには鍵盤楽器や、現代的には電気楽器も加わる場合もある。主にクラシック音楽を演奏するが、ラテン音楽ジャズ、その他のジャンルを演奏する団体もある。クラシックの団体が別名で軽めのクラシックやポピュラー音楽を演奏するためのポップス・オーケストラはおおむね母体と同様の楽器編成であるが、これに対しイージーリスニングなどポピュラー音楽専門ののオーケストラは四部または五部のストリングスに自由な編成の管楽器、打楽器、エレキギターを加える。ダンス音楽や行進曲などを演奏する小規模な編成のものはバンドなどとも呼ばれる。フルートオーケストラマンドリンオーケストラウインドオーケストラ(管楽器のみ)という言葉も使用されているが、それらは以下で述べる厳密な意味でのオーケストラではない。マハヴィシュヌ・オーケストライエロー・マジック・オーケストラなどのように、数名編成でもあえてこの名を用いるバンドについても同様である。

ロマン派音楽の頃に多かったオーケストラ編成が、標準的な編成とされている。古典的な作品の演奏ではこれよりも若干小規模で、近代的なものには、より大規模なものも存在する。これらの編成は、主要な管楽器の員数によって二管編成、三管編成、四管編成など呼ぶ。下記の編成の例は二管編成である。団体としてのオーケストラの構成員の数は様々なので、団体と作品によっては通常の団員に加えて臨時参加の奏者を加えて演奏することもある。

歴史

オーケストラの語は、ギリシャ語のオルケーストラ(ορχηστρα)に由来する。これは舞台と観客席の間の半円形のスペースを指しており、そこで合唱隊(コロスコーラスの語源)が舞を踊ったりしていた。

現在の弦楽合奏に管楽器の加わった管弦楽の起源としては、ヴェネツィア楽派の大規模な教会音楽や、その後のオペラの発展が重要である。古典派期には交響曲協奏曲オペラの伴奏として大いに発展し、コンサートホールでの演奏に適応して弦楽を増やし大規模になり、またクラリネットなど新しい楽器が加わって、現在のような形となった。グルックのオペラ『オルフェオとエウリディーチェ』において、ピッコロクラリネットバスドラムトライアングルシンバルがオーケストラに加わった。

ロマン派音楽ではさらに管楽器の数や種類が増え、チャイムマリンバグロッケンシュピールなどの打楽器が加えられた。時にはチェレスタピアノなどの鍵盤楽器やハープが登場するようにもなった。

運営・組織

多くのプロ・オーケストラは常設かつ専門の団体である。

歌劇場のオーケストラピット内での活動を主とするオーケストラはドイツを中心に多数存在し[1]、そのほとんどがオペラのみならず演奏会も行う。ウィーン国立歌劇場管弦楽団員の中から組織されるウィーン・フィルハーモニー管弦楽団は、その一例である。ドイツ圏はあわせて下記の放送交響楽団や、いずれにも属さないコンサートオーケストラも非常に盛んなこともあり、世界でも群を抜いたオーケストラ大国となっている。東西ドイツ統一時にはプロオーケストラの合計数200といわれた(オーストリアやスイスは含まれない)が、現在は統合により若干減少している。ただし、税金の補助が厚いため、たとえば概ね自主運営に頼るロンドンの5大オーケストラが70~90名編成で大曲演奏の際はエキストラを入れているのに対し、人口7万の都市に拠るバンベルク交響楽団ですら110名編成を擁する(同団は特殊な歴史的事情もあるが)など、全体にフル編成志向が強い。これは、ローテーション式が多い歌劇場管弦楽団の伝統も影響している。オーケストラは小編成で発足して徐々に拡充していく例が一般的で、大編成オーケストラは財政基盤が安定していることが多いため、編成がそのままオーケストラの格付けに結びつくように誤解されることもあるが、必ずしもそうではなく、ロンドンをはじめ三管編成にとどまったまま世界一流と見なされる団体も少なくない。

また、放送局が専属のオーケストラを持つ例も多い(放送オーケストラ)。これはもともと、番組のテーマ曲、ドラマの伴奏、各種の放送用音楽を調達しやすくするために所有しはじめたのが根源であり、大小さまざまな放送局がそれぞれの経済規模にあったオーケストラを所有していた。大きな放送オーケストラは、主に国家予算で運営されてきた、世界の国営放送局や、それらにかわる公共放送局などであり、放送の歴史が長い欧州に多い。ラジオフランスに代表される各国の国営放送直営の楽団や、ドイツの各地域を担当する公共放送局の楽団(バイエルンベルリン北ドイツなど)などがその例である。BBC有名交響楽団を持つ公共放送局である。また、商業放送会社が所有したオーケストラの一例として米国NBCが所有していたNBC交響楽団がある。日本においてはABCABC交響楽団ほか複数の管弦楽団を所有し、演奏会のほかに、放送番組用の音楽を多数演奏した。また日本フィルハーモニー交響楽団は、当初文化放送の専属オーケストラとして誕生し、フジテレビジョンと専属契約を結んでいた。NHK交響楽団は独立した財団法人ではあるが、日本放送協会(NHK)と密接な関係を有しており、放送局付属オーケストラに準ずる存在となっている。また、ベルリンの米軍占領地から東ドイツに向けて放送されていたRIASが所有していたベルリン放送交響楽団などもあり、現在も名を変えて活動している。

地方都市に本拠を置く楽団の場合は、楽団の運営資金の多くを自治体に依存して運営されていることがある。この場合、自治体の財政状態に楽団の運営も左右されがちになっている。

反面、独立の団体としてのオーケストラは、オーナーからの定期的な演奏の発注がないため、定期演奏会の入場料やレコード録音の契約料を頼みにしなければならず、優れた契約スポンサーを持っているか、ごく一部の人気楽団や経営形態の改善に成功した楽団を除けば、これだけで存立することは難しい。オーナーやスポンサーの引き揚げによって、独立運営を強いられるケースもあり、これは直接オーケストラの存続に関わる。海外ではEMIの支援を失ったフィルハーモニア管弦楽団の解散[注 3]、日本でも1972年日本フィルハーモニー交響楽団の解散・分裂などの事例が発生している。上2件は再建に成功した例だが、NBC交響楽団はスポンサー撤退、新組織以降後9年で消滅した。日本のABC交響楽団に至っては名義の継承先が転々として解散時期すら明確に記録されていない。

以上のような常設楽団に対し、毎年の音楽祭などで臨時に集まる音楽家によって組織されるものも存在する。例えばバイロイト祝祭管弦楽団が有名なものであり、日本ではサイトウ・キネン・フェスティバル松本の際に結成されるサイトウ・キネン・オーケストラなどがある。また、通常は楽員が個別の音楽活動をし、コンサートの度に集まる形で運営されている非常設楽団も存在する。日本では静岡交響楽団浜松フィルハーモニー管弦楽団、Meister Art Romantiker Orchesterなどがその例である。

編成

第1ヴァイオリンからコントラバスまでの弦五部は多くの場合、各部の人数が演奏者に任されているが、現代では一般的に次のようなパターンがある。

管楽器の規模の例 第1ヴァイオリン 第2ヴァイオリン ヴィオラ チェロ コントラバス プルト比率
8型 8人 6人 4人 2人 1~2人 4:3:2:1:1
二管編成 10型 10人 8人 6人 4人 2~4人 5:4:3:2:1
二管編成 12型 12人 10人 8人 6人 4人 6:5:4:3:2
三管編成 14型 14人 12人 10人 8人 6人 7:6:5:4:3
四管編成 16型 16人 14人 12人 10人 8人 8:7:6:5:4
四管編成 18型 18人 16人 14人 12人 8~10人 9:8:7:6:5
五管編成 20型 20人 18人 16人 14人 10人 10:9:8:7:5

管楽器は原則として楽譜に書かれた各パートを1人ずつが受け持つ。ただし実際の演奏会では、倍管といって管楽器を2倍にしたり、「アシスタント」と呼ばれる補助の奏者がつくこともある。

楽譜に示されたオーケストラの編成の規模を示すのに、二管編成、三管編成、四管編成という言葉が使われる。いずれも木管楽器の各セクションのそれぞれの人数によっておおよその規模を示す。

中世音楽

この時代の西洋にはオーケストラは存在しない、と言われている。しかし西洋以外では、当時の中国宮廷音楽は数百人の合奏による音楽が演奏されていることを示す資料が発掘されている。

ルネサンス音楽

モンテヴェルディはスコア序文に楽器編成を書いた世界初の作曲家である。そこにはオーケストラの黎明期の編成が記されている。

バロック音楽

バロック期のオーケストラでは、管楽器は各パート1名、ヴァイオリンは2パート2〜3名ずつ、ヴィオラ、チェロ2名、コントラバス、ファゴット、鍵盤楽器各1名という程度の規模が多く、大規模でも総勢20名程度のものであった。弦楽を含めた全てのパートを各1名で奏することもある。そのため、バロック期のオーケストラは室内楽あるいは室内管弦楽の範疇とされることもある。なお、1749年ヘンデルによって作曲された管弦楽組曲王宮の花火の音楽」では、大国イギリスの国家行事という特殊事情もあり、現在考えても膨大な100人という規模の楽団によって、式典の屋外会場[2]で盛大に演奏された(参照:巨大編成の作品#番付外)。

次に示すのは、18世紀前半頃の後期バロック音楽J.S.バッハテレマンヘンデル等の盛期)の曲に多く見られる、規模の大きめな管弦楽編成の例である。

楽器の配置

オーケストラの楽器配置の一例(「ヴァイオリン両翼配置」)

オーケストラの楽器配置(Setting, Aufstellung)にはさまざまなやりかたがある。時代によって、また指揮者の方針によって工夫が重ねられてきた。

古典的配置

20世紀前半から半ばにかけては、第1ヴァイオリンと第2ヴァイオリンを左右に分ける楽器配置が多かった。これは「ヴァイオリン両翼配置」「対向配置」などと通称されている。

現代における一般的な配置

一方、華麗なオーケストラ・サウンドを追究し続けた指揮者レオポルド・ストコフスキーは、1930年代に独自の楽器配置を造り出した。これは、客席から向かって左側から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが並び、チェロの後方にコントラバスが置かれる。つまり、客席から向かって左から右にかけて、弦楽器を高音から低音へと並べるのである。この配置は「ストコフスキー・シフト」と通称され、コンサート・ホールでの響きが豊潤になるという利点とともに、1950年代頃から一般的に行われるようになったレコードのステレオ録音にも適しているとみなされ、20世紀後半には世界中のオーケストラに広まっていった。

現在使われている近代的なオーケストラの配置の一例(方向は、客席側から見たもの)を示す。弦楽器は「ストコフスキー・シフト」によっている。

  • 指揮者:最も前方の中央に立つ。
  • 弦楽器:演奏者2人でプルトを組む。左側から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、右側後方にコントラバスが並ぶ。
    • ただし、楽団によってはヴィオラとチェロの位置を入れ替えているところもある。
    • コンサートマスターは、第1ヴァイオリン最前列、客席側に座る。
  • 木管楽器:弦楽器後方に2列で並ぶ。前列左側からフルート、オーボエ、後列左側からクラリネット、ファゴットが並ぶ。
  • 金管楽器:木管楽器後方に、左側からトランペット、トロンボーン、チューバが並ぶ。ホルンはトランペットの左側に2列で並ぶことが多いが、右側になることもある。
  • 打楽器:金管楽器の後方、または舞台左奥に配置される。
  • ピアノ、ハープ:第1ヴァイオリンの後方に配置される。
  • 合唱:合唱が含まれる曲の場合、オーケストラの後方に合唱団が配置される。

外部リンク: stage formation of orchestra (オーケストラの楽器の並べ方)

変則的配置

現在のオーケストラはチューバが指揮者のすぐ横[4]にいる、またはハープが指揮者の真ん前にいる[5]、などといった変則配置は当たり前になっている。
ルチアーノ・ベリオの「コロ」は声楽家と器楽奏者がペアを組んで座る[6]
前衛の時代は変則配置で当たり前、という時代だったが、現代音楽の退潮に合わせて本来の古典的な配置を好む作曲家も多い。

指揮者

多くの場合、指揮者は(専属契約を結んでいる場合でも)オーケストラの一員ではない。演奏会ごとに違う指揮者が指揮をすることが多い。しかし、同時に多くのオーケストラは「常任指揮者」(あるいは「首席指揮者」「音楽監督」)と呼ばれる特定の指揮者と長期にわたって演奏を行うため、その指揮者の任期中は、その指揮者の得意なレパートリーや演奏の様式によってオーケストラの個性が特徴付けられることが多い。しばしば指揮者の名前を冠して「~時代」などとして言及されるのはこのためである。このような関係として特に有名なものの一例は次のようなものである。

日本人においては、

(団体名は在任当時)

常任指揮者以外の指揮者を「客演指揮者」と呼ぶ。多くのオーケストラでは、多数の客演指揮者を迎えることで、公演レパートリーの不足を補ったり、新しい共演により芸術的な向上を目指すことがある。しかし、かつてのフルトヴェングラーやカラヤンのように、常任指揮者の権限によって、自分の気にそぐわない指揮者に客演させないというケースも存在する。

用語

コンサートマスター/コンサートミストレス
多くの場合第1ヴァイオリンの首席奏者。オーケストラ全体の演奏をとりまとめ、指揮者に協力して様々な指示を出す。日本ではコンマス(コンミス)とも略称される。
首席
トップともいい、楽器(ヴァイオリンの場合はパート)ごとの第一人目の演奏者のこと。他のパートと調整を行い、パート内に様々な指示を出す。職責としての首席と、演奏位置としてのトップが異なる場合もある。また、第1ヴァイオリンの首席は、コンサートマスターが第1ヴァイオリンの場合には、これを兼務せず、コンサートマスターと別に置く場合がある。
次席、副首席
トップサイドともいい、首席を補助する。場合によって、職責としての次席と演奏位置としてのトップサイドの異なる場合がある。
ライブラリアン
楽譜を管理する。
インスペクター
演奏面以外のことで、楽団全体を取り仕切る。
ステージマネージャー
公演にかかわるすべての舞台の準備および進行を取り仕切る。公演ごとの特殊楽器の手配(場合によっては製作することもある)、劇場、ホールとの舞台関係の打ち合わせを行い、指揮者および演奏者と打ち合わせた上での楽器配置を取り仕切る。指揮者、オーケストラの楽員、ソリストなどすべての動きを把握し、曲目にあわせてセットを変える責任を負う。日本においては、ステージマネージャーは、オーケストラおよびホールのステージマネージャーを指すことが多い。また、日本では各オーケストラの専属と劇場・音楽ホール専属、制作会社専属のステージマネージャーがいる。

評価

グラモフォン誌において、"The world’s greatest orchestras"として、以下の20楽団が選出されている[7]

  1. ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
  2. ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
  3. ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  4. ロンドン交響楽団
  5. シカゴ交響楽団
  6. バイエルン放送交響楽団
  7. クリーヴランド管弦楽団
  8. ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団
  9. ブダペスト祝祭管弦楽団
  10. ドレスデン・シュターツカペレ
  11. ボストン交響楽団
  12. ニューヨーク・フィルハーモニック
  13. サンフランシスコ交響楽団
  14. マリインスキー劇場管弦楽団 (旧.キーロフ歌劇場管弦楽団)
  15. ロシア・ナショナル管弦楽団
  16. サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団
  17. ライプチヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
  18. メトロポリタン歌劇場管弦楽団
  19. サイトウ・キネン・オーケストラ