IBM 704 メインフレーム

メインフレーム: mainframe)は、主に企業など巨大な組織の基幹業務用などに使用される、大型コンピュータを指す用語。汎用コンピュータ汎用機汎用大型コンピュータ大型汎用コンピュータホストコンピュータ大型汎用計算機 などとも呼ばれる。対比語は時代にもより専用機、分散コンピュータ(オープン系システム)など。

概要

フランクリン生命保険会社に設置されたUNIVAC I
1960年代後半、NASAに設置されたSystem/360モデル91のオペレータコンソール

メインフレームの明確な定義は存在せず、複数のコンピュータ・アーキテクチャのコンピュータの総称であり、観点により複数の呼称がある(詳細は「呼称」を参照)。

大企業や大組織向けの信頼性・安定性・容量や、シリーズ間の互換性を保持し、ミニコンピュータオフィスコンピュータより大型で、特定用途の特化型スーパーコンピュータ組み込みコンピュータなどと異なり汎用性があり、オープンシステムと異なり各メーカーによる独自設計(CPUやOS、ネットワークなど)の比率が高い。

世界初のメインフレームは、世界初の商用コンピュータである1951年UNIVAC Iとされる。また1964年IBM System/360アーキテクチャ命令セットアーキテクチャとチャネル制御言語)を統一して「汎用コンピュータファミリ」との概念が確立され、以後のメインフレームの主流となった。

オペレーティングシステムマルチタスク仮想記憶仮想機械キャッシュメモリ分岐予測ハードディスクフロッピーディスクデータベース管理システムオンラインシステムなどの技術はメインフレームから生まれ、後に他のコンピュータにも採用されていった。

メインフレームは1980年代迄は全盛期であったが、1990年代にはオープンシステムの台頭によるダウンサイジングの波により「レガシー(過去の負の遺産)」「滅びゆく恐竜」とも呼ばれた。しかし長年の設計・運用を含めた信頼性と、一部メインフレームでの各種のオープン標準の取り入れ、2000年代以降のインターネットに代表される新しい集中処理などの潮流もあり、2010年代からはクラウド・システムとの連携というオプションも進められている。このように、業務ミッションによって柔軟性の高いオープンシステムと、堅牢性・信頼性のメインフレームを組み合わせるなど、ハイブリッドなシステム形態が見直されるようになった[1]。メインフレームは2017年現在でも基幹業務用に使用されている。

現在もメインフレームを製造・販売しているメーカーは、IBM富士通日立製作所[2]日本電気ユニシスBullである(詳細は「種類」を参照)。2015年では、IBMが世界シェアの80%と圧倒地位を占めており、富士通、ユニシスがそれに続く。

2015年の市場規模は世界全体で約5000億円で、2000年の約1兆円規模から半減している[3]。なお日本での売り上げは世界市場の20%ほどを占める。かつては、日本が世界全体の売り上げの30〜40%と最大の市場であったこと、サーバ市場におけるメインフレームの比率が高かったこと、メーカーの数も世界で6社中3社と多いことから世界有数の「メインフレーム大国」とも呼ばれていた[4]

呼称

メインフレームは複数のアーキテクチャのコンピュータを世代・用途・規模などで分類した用語のため、趣旨や経緯により以下のように多数の呼称がある。また、1990年代以降は一部のメインフレームでオープンシステム対応が進み、各呼称の表す内容も変化がみられる。

メインフレーム(英語: mainframe
直訳は「主な枠」。名前の由来は諸説あるが、周辺機器端末などを含めたシステム全体の中核をなすためと言われる。当初は単に「コンピュータ」と呼ばれていたが、1960年代にミニコンピュータ分散システムとの対比語として使用され始めた。なお、メインフレームを製造・販売しているメーカーをメインフレーマーとも呼ぶ。
汎用コンピュータ、汎用機(英語: general purpose computer, all purpose machine
System/360登場以前の「専用機」(当時の商用計算専用機や科学技術計算専用機など)との対比語。厳密には、メインフレームで商用計算と科学技術計算を兼ねないものは汎用コンピュータとは呼べない。1990年代にUNIXサーバパーソナルコンピュータなどが普及すると、この用語の使用頻度は減少した。
大型コンピュータ(英語: large computer
筐体サイズ、金額、構築されるシステム規模などによる分類。対比語はミニコンピュータオフィスコンピュータなどの中型(ミッドレンジコンピュータ)や、ワークステーションパーソナルコンピュータなどの小型など。必ずしもアーキテクチャは意味しない。
ホストコンピュータ(英語: host computer
本来は端末との、現在では分散システムなどとの対比語。メーカーなどが公式に使用することは少ないが、日本の現場では伝統的に広く使われており、メインフレーム系の技術や担当者(技術者・営業)を「ホスト系」、分散システムのそれを「オープン系」と呼ぶ場合も多いが、日本以外では必ずしも通用しない。
その他
1990年代のダウンサイジング全盛時代より、メーカーによってはメインフレームを「メインフレームサーバ」(サーバ機能も兼ねるメインフレーム)、「エンタープライズサーバ」(大企業向けのサーバ)などと呼んでいる。

日本では従来はマスコミ・政府・経済産業省(旧通商産業省)・JISの文献において、「汎用コンピュータ」や「汎用機」が広く使用されたが、2000年以降は「メインフレーム」が増加傾向にあるとされる。

主要メーカーでは、現在は主に以下を使用している。

  • メインフレーム - IBM富士通日本電気
  • エンタープライズサーバ -

    誕生(1950年代 - )

    1950年に世界最初の商用コンピュータUNIVAC Iが登場した。企業など大規模組織の基幹業務での使用に耐えるように、次第に以下の特徴を持った。

    • 大量のデータ処理能力(CPU性能だけでなく、特に入出力性能)
    • 1台で多数の業務処理を並行して処理するワークロード管理
    • 徹底した冗長化などによる、高度な信頼性と可用性
    • 大組織に必要な、厳格な運用管理機能とセキュリティ機能
    • メーカー側の長期計画や保守体制

    複数のメーカーが1950年代から1970年代にかけて[5]大型コンピュータ(メインフレーム)を製造していた。それらを「IBMと7人の小人たち(バロースCDCGEハネウェルNCRRCAUNIVAC)」と呼んだ。

    IBMは現在、1952年のIBM 701以降をメインフレームと呼んでいる[6]。IBMが1964年に発表したSystem/360シリーズは大成功を収め、System/360で集大成された以下の特徴の多くは、その後の各社メインフレームの特徴ともなった。さらにメインフレームに限らず、1970年代中期以降のミニコンピュータや、1980年代中期以降のマイクロプロセッサも同様である。

    汎用コンピュータ
    従来はデータの移動や集計と十進計算を主とした商業的データ処理向けの機種と、科学技術計算など数値計算向けの「計算」機の、どちらかに偏らせた設計とするのが一般的で個々に設計されていたのを、両方を同時にまかなうことが可能な「汎用」コンピュータとした。
    一貫したアーキテクチャ
    従来は前述のように命令セットがモデルごとにまちまちであったのを、汎用として統一することで一貫した命令セットアーキテクチャによるコンピュータとし、ソフトウェアから見たハードウェアの仕様(CPUへの命令セットI/Oへのチャネルコマンドワード (CCW) など)を一本化した。モデル間や世代間の互換性が確保された、単なる型番の連続ではない「シリーズ」が形成された。
    オペレーティングシステム
    アーキテクチャの統一により、メーカが多大な開発コストを掛けてでも汎用OSを提供する意義ができ、OS/360が開発された。なお「多大な」は予想以上となり、発表後にはおおむね順調にリリースされたSystem/360の各モデルのハードウェアと異なり、OS/360の開発の苦難はソフトウェア開発に関する『人月の神話』という書籍に残されている。

    アーキテクチャの統一によりSystem/360が大ヒット機として普及し、メインフレームの標準となったことで、IBM互換の周辺機器を開発して商売とする企業や、さらには本体までも互換(プラグコンパチブル)機があらわれることになった。System/360の基本アーキテクチャは現在のSystem zシリーズにも受け継がれており、System/360用の24ビットのコード(実行モジュール)は最新のSystem zハードウェア上でも修正せずに動作させることができる(バイナリ互換、ただし近年はファームウェアによる仮想化が間に入っている)。

    全盛期( - 1980年代)

    IBMの競合会社は次々とコンピュータ事業の撤退・縮小に追い込まれたため、IBMは司法省と独占禁止法訴訟を続ける事になる。IBMは当初「顧客に製品ではなくソリューション(サービス)を提供する」ためにレンタルのみでの提供を行っていたが、独占禁止法の訴訟を緩和するため、OS(MVSなど)の有料化、更にはリース・買取政策を進めていく。

    またSystem/360後継のSystem/370、更には 1981年System/370-XA (eXtended Architecture) では、主要機能を著作権で保護したため、IBMへの独占批判は強まった。

    「7人の小人」からGEとRCAが脱落すると、"The BUNCH"(束)と呼ばれるようになった (Burroughs, UNIVAC, NCR, CDC, Honeywell)。また、System/360を開発したアムダールは、IBMを退職して富士通の援助も受け、IBM互換機(System/370 プラグコンパチブル)を開発するようになる(IBMのオペレーティングシステムを動かすため、ハードウェア互換と呼ばれる)。

    米国以外で特筆すべき製造業者としては、ドイツシーメンステレフンケンイギリスのICL (現: Fujitsu Services Holdings PLC)、ソビエト連邦などのIBM互換機がある。

    競争の激化に伴って1980年代初頭から市場の再編成が始まった。RCAはUNIVACに売却され、GEは撤退、ハネウェルはフランスのBullに売却された。1986年、UNIVACはバロースと合併してUnisys Corporationとなった。1991年、AT&TはNCRを実質的に所有することとなった。

    1981年にはレーガン政権のもと、米国司法省がIBM独禁法裁判を断念し起訴を取り下げた。

    日本上陸( - 1980年代)

    日本は、通商産業省(当時)を中心に外資規制と多額の補助金、そして行政指導により国産コンピュータへの誘導をおこなっていたため、最後までIBMがメインフレームを独占できなかった国である。日本以外ではメインフレーム・メーカーはIBM(およびユニシスBull)しか存在しないといっても過言ではない。

    1950年代より、日本の電機・通信の大メーカーの一部が、それぞれコンピュータを開発していたが、徐々に海外と技術提携を進めることになる。

    1961年 日立製作所RCAと技術提携し、1964年にはRCASystem/360互換機をベースにしたHITAC8000シリーズを発売した。また、同64年のHITAC5020は、独自開発による。

    1962年 日本電気ハネウェルと技術提携し、1964年にはハネウェルのH200シリーズノックダウン生産したNEACシリーズ2200を発売した。

    1964年 この年の4月、IBMがSystem/360を発表。東芝GEと技術提携し、1970年にはGE-600シリーズの技術を導入したTOSBAC-5600シリーズを発売した。同64年10月に松下がコンピュータから撤退する。

    1970年 これまで独自路線を通してきた富士通が、IBMを退社したジーン・アムダールが設立したアムダールと提携し、IBM互換機路線に転換した。なお同年には大手のGEがコンピュータから撤退し、IBMの「一人勝ち」状態は国内でも「脅威」として伝えられた。

    1973年には米国からの圧力などでコンピュータの輸入自由化が決定されたが、それを前に通商産業省は、当時の国内コンピュータメーカーの体力ではIBMをはじめとする海外メーカーに日本市場を席巻され打撃を受けるとして、当時6社あったコンピュータ業界の再編に乗り出した。

    1972年 通商産業省は、富士通と日立製作所、東芝と日本電気、三菱電機と沖電気工業の3グループにまとめ、技術研究組合を作らせて5年間にわたって補助金を支給し、各社に「IBM対抗機」の開発に当たらせた。富士通と日立製作所はIBMのSystem/370の互換機を担当した(FACOM Mシリーズ、HITAC Mシリーズ。2000年までMVS系OSの動作を保証していた。両社の両シリーズの「M」は通産省 (MITI)の指導で始まったことに由来する)。東芝と日本電気はハネウェルと提携し、GCOS系であるACOSシリーズを開発した。日本電気はIBM互換路線を採らなかった。

    6社がこの3グループとなった理由は以下とされる。上述のように日立製作所はRCAと、富士通はアムダールと技術提携してIBM互換機を開発していた。また東芝はGEと、日本電気はハネウェルと技術提携していたが、GEは1970年に撤退して商用コンピュータ部門をハネウェルに売却していたため、系統の差はあるがいずれもGCOS系を開発していた。そして残った三菱電機と沖電気が組み合わされた。

    1981年にはIBMが発表した3081-K (System/370-XA) の技術情報をめぐり、1982年にIBM産業スパイ事件が発生し、日立製作所と三菱電機の社員が逮捕され、更に富士通も交渉の当事者となる。後に当訴訟は和解となった。

    その後、日立製作所はIBMとの提携路線に転じてIBM互換路線を継続、富士通はIBM対決路線を徹底して以後の互換性確保は限定的となり、日本電気はACOSシリーズを継続しながら開発の比重をオープンシステムに移し、三菱電機は一時はIBMよりOEM供給を受けたが後に撤退、また沖電気工業と東芝は撤退した。

    ダウンサイジングの波(1990年代)

    1990年代になると、WindowsやUNIXなどのオープンシステムの価格性能比が向上し、クライアントサーバモデル (C/S) というシステム構成や、グラフィカルユーザインタフェース (GUI) に代表されるユーザインタフェースNetBIOSTCP/IPなどの通信プロトコルの普及と相まって、ダウンサイジングが世界的に発生する。

    メインフレームは「レガシー(過去の負の遺産)」「滅び行く恐竜」と称され、IBMなどの殿様商売的な経営手法(顧客実情を無視した箱売り、市場に合わない一方的な契約条項など)もあり、各社メインフレームの収益は急速に悪化した。これらの影響は当時多数存在したメインフレーム専用のアプリケーションを開発する中小ソフトウェア会社にも及び、性能が向上し実用品となったパソコン向けソフトとして自社製品の一部機能を移植したり、中にはフロム・ソフトウェアのように業界自体に見切りをつけてゲーム開発に鞍替えする会社まで現れた。

    この時期に各社は以下の対応を行った(オープン対応も参照)。

    • IBMはメインフレームを「オープン・メインフレーム・サーバ」と称し、CPUのCMOS化、64ビット化、オープン要素の取り込み、更にLinuxサポートを行った。
    • 富士通はメインフレームを既存業務用とし、CPUのCMOS化や性能向上は行う半面、64ビット化やLinux対応など大幅な拡張は停止した。
    • 日立製作所はIBMと技術提携を続け、CPUのCMOS化、64ビット化を行った。一時はLinux対応も公開していた。
    • 日本電気はメインフレームを既存業務用とし、小規模用のACOS-4Itanium 2に、ACOS-2Xeonに移行し、Windows Server等も同時稼働可能にした。
    • ユニシスは、

      ダウンサイジングにより絶滅するかと思われたメインフレームだが、特に日本では現在でも大規模な企業・組織で使われ続けている。

      • 特性上、基幹業務での安定性・信頼性はオープンシステムより優れている。特にメインフレームが得意とするバックエンドのデータベーストランザクション処理は増加傾向にある。
      • クローズドな特性もセキュリティやデータ整合性には、かえって好ましい。
      • コスト面で価格性能比が向上し、導入後の保守運用 (TCO) を考慮すれば安価である。

      2000年代に入ると、大規模で安定した巨大サーバが見直された。

      • インターネットによって処理形態が変化し、クライアント(PCなど)からブラウザの先(サーバ)に移動した。
      • サーバーの乱立などダウンサイジングの弊害から、大規模な企業・組織ではサーバー統合や仮想化が進められるようになった。仮想化はメインフレームから始まった技術である。

      メーカーも方針を転換している。富士通は2005年頃からラインアップの拡充とWebサーバ機能を強化したGSシリーズを投入した。GSはGlobal Serverの略称で、「巨大Webサーバとしてのメインフレーム」を念頭に置いた製品であることを示している。

      しかし台数ベースや金額ベースで見た場合、メインフレームは減少し続けている。仮想化を含むサーバ統合によって、台数が減少した。価格性能比の向上で、金額が減少したと解釈することも出来るが、「メインフレームの復権」かどうかはハッキリしない。なお最近のIBMの発表は出荷MIPS数比での発表が多い。

      コスト面でも、未だに風当たりが強い。2003年、自由民主党の「e-Japan重点計画特命委員会」は政府に『電子政府及びCIO連絡会議に関する申入れ』を行った[7]。官公庁はメインフレームを使用したレガシーシステムに年間7000億円をつぎ込んでいた[8]。メインフレームを使用したレガシーシステムは随意契約の無駄もあり、1件当たりの年間平均コストは約170億円に及んだ。メインフレームを使用しない場合(約37億円)の約5倍であった[9]。またクラウドコンピューティングにおいても、Amazonやgoogleなどは市販のパソコンを並列化して安価な巨大サーバを構築し、エラー忘却型コンピューティングを実践している。それに対して日本は頑強なサーバーと高価なミドルウエアを使用している。2倍以上のコストという意見がある[10]

      しかし実際問題として、PCサーバ並列化はリスク分散のメリットとは裏腹に1基のCPUがダウンすることで、ストレージの一部が参照できなくなったり、一部のタスクが丸ごと止まってしまい、結果として広範にトラブルが広がるというデメリットがあり、しかもCPUが過負荷に弱い。この為、用途やTCO、また保守性・信頼性で評価すれば、一概にメインフレームが高いと言えない。

      2000年ごろは、メインフレーム大国である日本に対して厳しい視線が注がれていた。しかし、2004年ごろからメインフレームの見直しは世界的なものになり、IBMや富士通のMIPSベースでの出荷数が増加している中、逆に日本の官公庁などがPCサーバの不得手とするデータベース集中管理をPCサーバに移行するなど、逆転現象が発生している。

      メインフレーム大国

      日本は世界有数の「メインフレーム大国」である。2007年時点では、日本のサーバ市場の約4分の1を占め、欧米の2倍以上の金額が費やされていると言われていた[4]JEITAの出荷自主統計参加会社の調査[11][12]を見ると、メインフレームは金額も構成比率も一貫して減少している。JEITAの出荷自主統計参加会社には、日本の全企業が参加しているわけではなく、例えば2011年度は日本HP株式会社やデル株式会社などIAサーバー大手は参加しておらず、2011年度は11社で、参加会社は年度ごとに変化していて、日本国内の真の出荷比率ではないことに注意。2011年現在は、市場の中心は1億円前後のメインフレームよりも100万円以下のIAサーバに移っている[13]

      JEITA出荷自主統計参加会社の日本の出荷金額ベースの構成比率
      1998年度 2002年度 2007年度 2011年度
      メインフレーム 51%
      8231億円
      38%
      3702億円
      25%
      1658億円
      17%
      603億円
      UNIXサーバ 25% 41% 33% 28%
      IAサーバ 9% 15% 38% 54%
      独自OSサーバ他 15% 7% 4% 2%
      統計参加会社の日本への出荷金額 1兆4710億円 9867億円 6701億円 3641億円
      国内の推定出荷金額
      (IDC Japan)
      7731億円[14] 6364億円[15] 4691億円[16]

      2017年現在、現存メーカーも世界6社中3社が日本企業(富士通・日立製作所・日本電気 (NEC))であるが、世界全体ではIBMが市場の80%を占有しており、日本メーカーの売上は国内が中心であり、三社合わせても世界シェア20%に届かない。公共機関への出荷が多い(後述)。

    特徴

    メインフレームは長い歴史と複数のアーキテクチャを持ち、また専用のハードウェアと専用のソフトウェアが一体として設計・拡張されているため単純な特徴の説明は難しい。一般的な特徴と傾向は、以下が挙げられる。

    • 各メーカー独自のハードウェア、OSなどを備える場合が多い(ただしオープン対応も進められている)
    • 複数業務の並行稼動性に優れている(I/Oを含めた平行稼働、ワークロード管理)
    • 特に大規模バッチ、大規模帳票出力業務などに強い(安定したスループット
    • 各種の信頼性(徹底した冗長化、問題判別用の各種トレース、細かい単体FIXの迅速な提供など)
    • 販売価格、保守費用とも非常に高価(個別見積もり、リース利用が大半)
    • 筐体が大きい(過去には複数フロアー占有、CMOS空冷化以降はUNIXハイエンドと同規模)
    • 良くも悪くもベンダーへの依存度が高まりやすい(他社との単純比較は困難、詳細な運用情報のガイド等)

    以下は主にIBM系(IBM、富士通、日立製作所)を中心に説明する。

    CPU

    マイクロプロセッサの時代以前は、メインフレームの「本体」と言うべき筐体がCentral Processing Unitすなわち「CPU」であった(そもそもそれが「メインフレーム」であるわけだが)。マイクロプロセッサが生まれた後も、性能上の理由から(マイクロプロセッサはMOS(初期以降はほぼCMOS)であり、メインフレームで使われていたTTLECLに比べて遅い)メインフレームのCPUは複数チップから構成されていた(CMOSに比べて集積度が上げられないため)。

    1980年代までは、そのため発熱も大きく、とくに上位モデルでは液冷(水冷)とする機が多かった。1990年代に各社ともCMOSマイクロプロセッサに移行し、同時に発熱量が下がったため空冷として低価格・小型化した。その余裕をマルチプロセッサ化に振り向けることで性能は保たれた。ECLを使用した最後に近いものとしては1999年日立のMP6000がある。2001年発表のAP8000ではCMOS化した。

    現在は、独自仕様のマイクロプロセッサを複数(最大64個など)搭載するものが多い。

    IBMのアーキテクチャでは、System/360は32ビット(アドレス24ビット)、System/370-XA 以後は32ビット(論理31ビット。1ビットは互換性のために使用)、z/Architecture 以後は64ビットである。

    GEハネウェル系である日本電気のACOS-6系はワードマシンであり、独自アーキテクチャである。同社のACOS-4BullGCOS 8は、バイトマシンであり、仮想化技術を使用してItanium 2によるエミュレーションに移行した。またACOS-2Xeonに移行した。しかし2012年にはi-PX9800/A100を発表し、将来性や性能面から上位機種はItanium2から独自開発プロセッサの「NOAH-6」に戻った[17]

    日本国内でも、メインフレームの需要が減少したことから、メインフレームの製造は減少しているが、日立 (AP8800E)と富士通 (GS21)は共に独自プロセッサによるメインフレームを続けている。前述のようにIA-64プロセッサによるエミュレーションに移行した日本電気も、上位機種で独自プロセッサを再開した(詳細は#メインフレームの再評価(2000年代)を参照)。なお日立は2000年に北米市場での新規営業を停止している[18]

    ただし、日立とIBMのプロセッサは2001年の発表によれば共同開発である[19]

    ユニシスの場合、大型機では独自のプロセッサを搭載している。中小型機では、Xeonを搭載し、OS2200系及びMCP系中型機ではLinuxベースのファームウェアによるエミュレーション、MCP系小型機ではWindows Server上で稼働するエミュレータ(MCPvm)によりそれぞれ独自OSを稼働させている。大型機・中型機の場合、コンソール制御用にオペレーション・サーバと呼ばれるXeon搭載のWindows Serverを搭載しており、また、Javaアプリケーション実行用に、JProcessorと呼ばれるXeon搭載のLinuxサーバを搭載可能である。

    各社に共通して、メインフレームではCPUの性能は全体性能に比例するとは限らない。汎用マイクロプロセッサをほぼそのまま使用するIAサーバやUNIXサーバと異なり、チャネルなどの専用IOを多数搭載し、ファームウェアが性能に大きな比重を占める(使用頻度の高い命令群のファームウェア化、使用頻度の低下したファームウェア機能の削除など)ためである。

    IBM System zでは、チャネル以外の専用プロセッサには、Linux専用プロセッサー (IFL: Integrated Facility for Linux)、Java専用プロセッサー (zAAP: System z Application Assist Processor)、DB 専用プロセッサー (zIIP: System z Integrated Information Processor) などがある。これらのプロセッサを使うことでCPUの負荷を低減できるとともに、ソフトウェアのライセンス料の低減も行うことができる。

    I/O

    チャネルと呼ばれるI/O専用プロセッサを多数(モデルにより最大1024個など)搭載できる。チャネルはI/Oに伴うCPUの負荷を軽減する。オープン系で一般的なインテリジェントな外部バスと異なり、接続経路が高負荷(ビジー)な場合には別経路を選択して使用する、I/Oの飛び越し(優先度の高いI/O要求が来た場合、既に実行中の他のI/Oに優先して結果を返す)などができる。

    一般に「メインフレームのCPUは高速と思えないのに、高負荷時にも安定稼動して一定の応答時間も得られる」、「オープン系のCPUは高速なのに、負荷がある時点に達すると急速にスループットが低下する」などはI/Oの基本設計の違いによる場合が多い。これは、メインフレームの場合、I/Oの制御をOSから切り離し、上記の専用プロセッサに任せているためである。したがって、一つの重いI/O要求が発生しても、OSは併行してタスク処理を進めるので、著しいレスポンスの低下を回避できる。これに対し、オープン系は、I/O要求が発生するとWIO (Wait I/O) 状態となり、CPU側でビジー状態ではないにもかかわらず、資源が使えなくなる事がある。よって、高速CPUを用いても、I/O処理が重い、高負荷等の事象が重なると必然的にレスポンス低下に至る。以前はメインフレームも似たような方式であったが、1980年代頃より現在の制御方式となり、I/O処理の部分がさらに強化された。なお現在のIBMメインフレームでは、各チャネルの内部的には複数のPOWER系プロセッサが搭載されている。

    また周辺機器との物理接続は、昔は同軸が主流だったが、現在はファイバー(FICONファイバーチャネル・FIBARCなど)が主流である。同軸ケーブルの場合、接続上の制約(パラレル転送による制限長)やケーブリング自体の負荷(1つのチャネルに直径3 - 4cmの同軸ケーブル2本の敷設が必要)など、インフラ面での設計が容易ではなかったが、FICON以降、軽減されている。

    クラスタリング

    メインフレームでは複数のOSが同一の磁気ディスク装置を共有(シェア)する事は一般的であり、整合性を保つためのキャッシュやロックなどの排他制御は、OSレベルで実現している(IBM IRLM・並列シスプレックスなど)。

    更にミドルウェアのクラスタリング機能 (IBM XRFなど)を組み合わせた場合は、障害発生時にディスクやプロセスの引継ぎをする事なく、待機系(アクティブスタンバイ)が瞬時に処理を引き継ぎ、ユーザには瞬間的な業務停止も見せない、更には障害機で処理中であったトランザクションも、TPモニタのログから可能な限り復元し引き継ぐ事ができる。

    これらの機能は1980年代には一般的で、2008年現在でも多数の金融機関などで使用されている。

    OS

    メインフレームでは各社の複数の独自OSに加え、一部はオープン系のOSも同時稼働できる。

    IBM系(IBM、富士通、日立製作所)の主流OSは、歴史的にはバッチ処理主体で始まり、複数アドレス空間、I/O割込ベースのマルチタスクジョブ制御言語によるプログラマーとオペレータの分離などを持つ。更にオンライン・リアルタイム処理のためのタイムシェアリングトランザクション処理を構築した。各社OSとも大規模用と中小規模用の流れがあり、コマンドやジョブ制御言語の構文などが異なる。「メインフレームのOS」と言うとこれらを指す場合が多い。

    IBM系では以上の主流OSの他、仮想化用、特殊用途用、UNIXやLinuxなどのオープン系OSもある。

    日本電気のACOSBullGCOSは、歴史的にMulticsの流れを汲み、最初からオンライン(タイムシェアリング)とバッチ処理を行い、UNIXのような階層化ファイルシステムを持つ。

    なおオープン系OSの稼働方法には以下があり、サーバ統合のレベルや、サポートされるアプリケーションに相違がある。

    • オープン系OSをメインフレーム専用CPUに移植する (IBM Linux on System zなど)
    • 専用OS用の専用CPUとは別に、オープン系OS用のCPUを搭載する(ユニシス ClearPathなど)
    • オープン系OS用のCPUに、専用OSを移植する(日本電気

      IBM系(IBM・富士通日立製作所)では、以下の組み合わせでOSを同時稼動させる事ができる。

      • 物理分割(物理パーティション (PPAR) ごとに、OSを稼動できる)
      • 論理分割(論理パーティション (LPAR) ごとに、OSを稼動でき、割当資源を動的に変更できる)
      • ソフトウェア分割(専用の仮想化用OSを使用し、仮想機械上でOSを稼動でき、割当資源を動的に変更できる)

      IBMの場合は、いずれの場合でも専用OS (z/OS, z/VSE, z/TPF) およびLinux for System z が同時稼動できる。(Linux だけを多数稼動させても良い)。

      ユニシス (ClearPath Server シリーズ)では、最大8パーティションに分割できる(IBM系の物理分割に相当すると思われる[独自研究?])。

      オープン対応

      1990年代に各社とも、イーサネットTCP/IP・各種の連携機能などには対応しているが、オープン系のOS (UNIX, Linux, Windows) そのものを稼動させる方法は、各社で相違がある。大別して外資系(IBM・Bull・ユニシス)は積極的で、国産各社は消極的と言える。

      IBMOS/390以後は専用OSでもUNIX互換環境 (USS) を標準とし、更にLinuxはネイティブ(専用OSを全く使用しない)でも稼動できる。

      富士通は、PRIMEQUEST・PRIMEFORCE等で同一筐体にIA/UNIXサーバ (Solaris, Windows Server等)を搭載できる。

      日立製作所は一時Linux for MP Seriesを出したが現在出荷はされておらず、現状ほとんどの環境で上位シリーズ (VOS3系)では下位シリーズ (VOS1, VOSK系)ともに、オープン系のOSは稼動しない。

      日本電気は各シリーズ (ACOS-6, ACOS-4, ACOS-2系)ともオープン系のOSは稼動しないが、仮想化技術を使用してACOS-4はItanium2に、ACOS-2はXeonに移行した。

      Bullは NovaScale 9000 (Itanium2) で、独自OS (GCOS 8) の他、LinuxWindows Serverも稼動できる。

      ユニシスは ClearPath Server(独自CPUおよびXeon)で、独自OS (OS2200またはMCP)と、LinuxWindows Serverも稼動できる。

      なお、同一筐体であってもオープン系OSをネイティブで稼動する場合は、メインフレームの利点はハードウェア面の信頼性や仮想化などになり、ソフトウェア面(専用OS)の利点・特徴は無くなる。

      セキュリティ

      メインフレーム(ハードウェアおよび専用OS)のセキュリティは、最初から企業などの大規模組織での使用を考慮した、基本設計によるものが大きい。

      • ユーザーやプログラムは、自分以外のアドレス空間は原則アクセス不可能。(ハードウェアでフラグを持っている。他に起動しているアドレス空間(プロセス)を知る事も不可能。アドレス空間同士の連携はCSAなどメモリ上のデータ域か、SSIなど極めて特殊な権限事前登録後の特定アドレス間のみ。)
      • ユーザーやプログラムは、自分用に指定された磁気ディスク装置以外は、原則アクセス不可能。(ジョブ制御言語 (JCL) で指定されたデータセット以外は存在を知る事も不可能。動的割当(ダイナミック・アロケーション)も基本的には同様。)
      • システムの権限が分散されている。(OS管理ユーザ、データ管理ユーザなどが別々に設定できる。オープン系のようなスーパーユーザは存在しない。いわゆるセキュアOS。)
      • 運用上もプログラマとオペレータは分離されている場合が多い。(プログラマはOSのコマンドは使わない、オペレータはプログラムを書くことはない)
      • ソフトウェアからマイクロコードにアクセスする事はできない。
      • 論理パーティション (LPAR) 間のTCP/IP通信を仮想化した場合、メモリ間となり筐体外に出ない。

      オープン系では通常、ネットワーク経由で進入後、脆弱性を攻撃しスーパーユーザに昇格さえできれば、そのコンピュータは完全に支配下に置ける。メインフレームの場合は、仮に同様の攻撃に成功しても、1アドレス空間しか支配できず、他のアドレス空間や他のデータセットへの読み書きもできず、システム全体の管理ユーザーにもなれない。

      なお、過去には以下も要因であったが、メインフレーム固有とは言えない。

      • 施錠されたマシンルームに保管され入室が厳しくチェックされていた。
      • ネットワーク回線は専用線を基本とした。(公衆回線は避けられた)
      • ネットワークプロトコルが独自で、各セッション単位で集中管理でき、常時監視(ポーリング)されていた。

      また「メインフレームのセキュリティが高いのは、数が少なく標的とした攻撃やウイルスが少ないため」という説明が広くされているが、メインフレームには世界中の銀行・政府・軍事情報が格納されていることを考えると妥当ではない。

      ただし、上記は全て専用OSの場合であり、UNIXLinux, Windowsをネイティブで稼働した場合は、OSレベルのセキュリティは、そのOSのレベルとなる。

      プログラミング言語

      メインフレーム上で使われている主なプログラミング言語には、当初からの各アーキテクチャ用のアセンブリ言語に加え、伝統的な高級言語であるCOBOLFORTRANPL/I、およびC言語C++Javaや、各ベンダー独自の4GLなどがある。

      メインフレームでは同一アークテクチャ内のCPU命令セットや入出力命令の上位互換が厳密に維持されている場合が多いため、アセンブリ言語は制御系や特に性能を重視する個所などに2010年現在でも使われ続けている。高級言語は普及時期がメインフレーム全盛期と重なった事もあり、商用計算ではCOBOL、科学技術計算ではFORTRANが2010年現在でも広く使われている。なおIBMは1980年代のSAA CPIではCOBOL・FORTRAN・C言語を採用したが、メインフレームではPL/Iを併用し続け、1990年代後半からはJavaも推進している。富士通NEC日立などでは伝統的なCOBOLやFORTRANを中核とし、C言語やJavaなどを併用している。

      性能

      メインフレームはI/Oを含めた平行稼働やワークロード管理により複数業務の並行稼動性に優れている。スループットが安定しているので、大規模バッチ、大規模帳票出力業務などに強い。

      メインフレームのスピードはベンチマーク値で表される事が多い。歴史的にはMIPS (million instructions per second) で計測されてきた。MIPSはメインフレームの性能を簡単に比較できる。IBMのメインフレームzSeriesの性能は約26MIPS (z890 Model 110) から20000MIPS以上 (z9-109 Model S54) とされている。

      しかし、MIPSは誤解を与える指標である。命令そのものの粒度が異なるため、プロセッサのアーキテクチャの変遷に伴って、MIPSが本来持っていた実行命令数という意味は失われている。MIPSは技術的には意味はなく、単に昔のマシンとの性能比較の目安となっているにすぎない。このためIBMはメインフレームに数種類の負荷をかけて計測するLSPR (Large System Performance Reference) レシオを公表している。

      同様のことがUNIXサーバでも見受けられる。顧客は用途に合ったタイプのベンチマークで性能を比較するようになってきた。例えばSPECintやTPC-Cなどである。もっとも、それらのベンチマークも全く問題がないわけではない。顧客が自分のシステムにどういったタイプの負荷がかかるのかを分析することは非常に難しく、結果として単にLSPRの値などを使う事になる。そういった意味でMIPSの使い道は残り、IBMや他のコンサルタントはMIPSを公表し続けている。

    用途

    2005年(平成17年)の調査によると利用別のシェアにおいて、基幹業務では「汎用機とオフコンが依然7割近く」使われている[20]。特にメインフレームは高い信頼性や大量のトランザクション処理が求められるシステムで使用される。

    • 企業、官庁、自治体などの基幹業務システム
    • 自治体(市町村)基幹業務システム
      • 住民基本台帳システム
      • 税務システム
      • 内部管理システム
    • 装置産業である銀行など大手金融機関(いわゆる、勘定系システムを中心とする「基幹系システム」とも称する計算機群)
    • コンビニエンスストアなどのオンライン業務のDBサーバ
    • 交通機関の座席予約システム(JRマルス)のような、大量のトランザクションの高速処理
    • 大手自動車メーカーの世界規模の部品表管理システム(メインフレームにLinuxを搭載)
    • 航空路管制システム(特に高い信頼性・性能が必要なため、TPFなど特殊なOSを使用している)

    産業別の出荷傾向を見ると[11]、トップは一貫して公共機関である。1998年度から2007年度の平均は、37%に及ぶ。ITゼネコンのお得意様である。なお金融機関の平均は19%である。

    出荷金額ベースの公共機関の構成比率
    1998年度 2002年度 2007年度
    国家公務・政府関係機関 2298億円 1029億円 517億円
    地方公務 748億円 600億円 220億円
    構成比率 41% 44% 45%

    メインフレームとオープン系

    メインフレームからオープン系へ移行することもある。