ギリシャ文明アパイアー神殿の射手の彫刻[1]

弓矢(ゆみや)とは、からなる武具狩猟具、軍事上での武器祈祷神事のために使われる。また、武芸のためや、近年にはスポーツ・娯楽などのレクリエーション用途にも用いられる道具である。矢は矢入れ英語版と総称される矢筒・(えびら)といわれる細長い軽量のなどに収納し携帯する。

湾曲する細長い素材(もしくは湾曲しない素材)の両端にを張って作られた弓を両腕で弓と弦をそれぞれ前後に引き離し保持しながら、弦に矢をかける。矢とともに弦を手で強く引いてから離すと、その弾性から得られた反発力で矢が飛翔し、遠方の標的を射抜く物をさす。

日本語においては、(さち)と言い箭霊(さち)とも表記し、幸福と同義語であり、弓矢とは「きゅうし」とも読み弓箭(ゆみや・きゅうし・きゅうせん)とも表記する。弓矢は、武具や武器、武道武術、戦い(軍事)や戦(いくさ)そのものを意味する。特に戦に限っては「いくさ」の語源が弓で矢を放ち合うことを表す「射交わす矢(いくわすさ)」[2]が、「いくさ(射交矢)」に変化したといわれる。また的は古くは「いくは」と読み、弓矢そのものであり、「射交わ」が語源となっている。

概説

初速 v, 角度 θ で高さ y0 から射出した時の放物線

弓矢は狩猟の道具としては非常に一般的なものでオーストラリアアボリジニニュージーランドマオリなど一部の文化を除いて全世界的にみられる[3]

狩りはもちろんのこと、時には漁りにも使われ、競技や戦いの場で普及してきた。そのため世界各地の文化文明々や宗教と繋がり、美術彫刻、歴史的な物語や故事などにもよく登場する普遍的な物でもある。間接的には一部の火起し器の起源であり、またはハープ竪琴)の起源であり、世界各地にある弦楽器の発祥とも関連がある場合が多いと考えられている。

弓矢から派生したものとして吹き矢ダーツ(日本では投げ矢という)・洋弓銃機械弓の一種)・大型の機械弓などがある。現在では大型の機械弓は消滅し、弓矢(和弓・洋弓など)・吹き矢・ダーツ・洋弓銃はスポーツとして楽しまれている。そのうち洋弓銃は軍隊警察の武器や兵器として採用する国もある。また弓矢と吹き矢は、世界各地で現在も生活の糧を得るため狩猟で使われている。 弓矢の構造や効果(飛翔性)は、力学放物線微分積分)という概念がない頃から世界各地おいて、それらについて試行錯誤され、初期の機械工学の発展の要因(機械弓、投石機)となった。

歴史

[4]矢柄の製作風景
北米先住民が初期に使用した
長弓の丸木弓の複製品
屈曲形短弓(コンポジットボウ)の複製品: モンゴルフン族の弓矢

起源

弓矢は数万年から数十万年前から使われてきた道具である[5]。例えばアルタミラ洞窟の壁画などには弓矢を用いた狩猟が描かれている[6]。投げ槍や投げ矢の技術が弓矢の発明につながったとされている[5]

弓の始まりは、世界中どこでも押並べて変わらず、湾曲形の単弓であり、短い弓であった。具体的には単一素材で弾性のある木材等を使用した弓で、湾曲させただけの丈も短い物であった。多くの地域で時代が下るとともに単一材の弓から複合材の弓への進化がみられる[7]

世界各地に残る原始宗教において弓矢や吹き矢は狩りの道具であるとともに首長(chief)などが兼任する祈祷師シャーマン)の祈祷や占い呪術などの道具でもある。世界各地の多神教文明において弓矢は霊力呪詛が宿る道具として考えられており、ギリシャ文明ヒンドゥー教や日本の神道などの神話に記述されている。

発達

文明が発達し人口も徐々に増え、国家領土という社会構造が出来るにつれ、世界中で大規模な争いが起きるようになってゆく。ここで戦いを有利に進めるために、考えられた戦術の一つが遠戦であり、弓矢は戦場において重要な役割を持つようになる。弓矢隊や弓兵・弓歩兵を生み出し、戦術も多様に広がった。そして戦いに馬を利用し、馬上から弓を引き、矢を射ること(騎馬弓兵という)から、短い弓のまま改良されていった。

多様化と衰退

現在の洋弓銃:屈曲形

ヨーロッパ中華文明圏では、機械弓や大型機械弓も発明され、破壊力や飛距離のあるものも作られ、矢だけではなく砲弾などが使用された。堅牢な石の組積造でできた城の城攻めにおいては多大な効果を発揮したといわれ、世界各地の国家覇権による軍事史においては、様々な軍事兵法として用いられその効果は兵法書や絵画などで伝承される。

ただし、機械弓は重さや連射性に問題があるため、通常の陸上戦や海上戦では使用が難しかった。日本にも機械弓の技術が大陸から伝わっていたが、当時の日本では大量生産に向かず、また火縄銃の伝来によりその活躍はなかった。そして銃の発明により、一部の機械弓を除いて戦いの場から弓矢は消えていった。

現代に伝わる弓矢の文化

ブラジルの先住民(インディオ)による弓矢の競技

古来より世界各地でスポーツや心身鍛錬として弓術は行われており、西洋のアーチェリー競技や日本の弓道などがある。

日本でも平安時代から神事としての側面や、江戸時代には弓術や弓道、祭礼や文化になり消え去ることはなかった。現代の日本においても変わらず祭事や儀式として弓矢を用いることも多く、疾走する馬上から矢を射る流鏑馬(やぶさめ)や通し矢、正月の破魔矢などがその姿をほとんど変えることなく見ることが出来る。

分類

複雑に屈曲している
ケーブル・バックド・ボウ[8]
小さな力で引けるように滑車を備えた弓。
コンパウンドボウ(化合弓)

形状による分類

直弓
弓幹から弦を外しても弓幹の形状がほぼ真っすぐのままの弓[10]。単一の材を用いた弓の多くは直弓である[10]
彎弓(曲弓、反弓)
弓幹から弦を外すと弓幹が弦を張る方向とは反対方向に反り返る裏反りのある弓[10]。複合材料を用いた弓の多くは彎弓(曲弓、反弓)である[11]
反曲弓(半彎弓)
彎弓(曲弓、反弓)のうち特に弓幹から弦を外したとき弓幹の形状がC字形や円形にまで反り返る弓は反曲弓(半彎弓)と分類されることもある[11]

構造による分類

単身弓(単一弓、単体弓、単材弓、単弓)
弓幹が単一の材料で構成される弓[11]。ヨーロッパやアフリカの弓の多くは単一の材料で構成される[11]
弓幹の断面が丸いものを丸弓(丸木弓、木弓)、弓幹の断面が扁平なものを平弓という[11]
補強や装飾のために植物のつる、籐、樺皮、糸や紐、金属などを巻き付けたものを巻弓という[11]
複合弓
弓幹に木や竹、動物の角、動物性繊維、金属など複数の材料を組み合わせた弓[12]。メソポタミア、アラビア、ペルシャ、北アジアなどに複合弓はみられる[12]
一部滑車を備えたものとしてコンパウンドボウ(化合弓)というものもある。