アイドルとは、「偶像」「崇拝される人や物」「あこがれの的」「熱狂的なファンをもつ人」を意味する英語idol)に由来し[1]、文化に応じて様々に定義される語である。

日本の芸能界における「アイドル」とは、成長過程をファンと共有し、存在そのものの魅力で活躍する人物を指す[2]

概説

キャラクター性を全面に打ち出し、ダンス演技お笑いなど幅広いジャンルで活動を展開しやすいのが特色である[2]。外見が最も重要視されるモデルとは異なり、容姿が圧倒的である必要はなく親しみやすい存在であることが多い[2]

一方で、はっきりと目には見えない“華”や“人間的魅力”が強く求められるため、一流のアイドルは手が届きそうで届かない存在となる[2]。日本国内において一義的には「アイドル歌手」の意味で使用されるが、後述のように「グラビアアイドル」など歌手活動を伴わないアイドル、「アイドルレスラー」など広義では芸能界以外でも使用する。

“存在そのものの魅力”よりも“音楽的スキル”が主たる職業能力である場合には、「アイドル」には分類されず「アーティスト」や「ミュージシャン」などと呼ばれる。ただし本人や所属事務所などの意向により、どちらの立場をとるか決めることもでき、線引きはあいまいである。そのため本人が「アーティスト」と名乗っていても、「アイドル」に分類されることがある[3]

かつての主流は20代でアイドルを休止し、アーティストや俳優(女優)などに転向することであったが、2000年代以降は様相が変わってきている。本人が30代以降になっても新たなチャレンジなどをし続ければ、“成長過程”や“存在そのものの魅力”が問われるアイドルという職業を継続することが可能であり、世間からもそれが認められるようになった[4]

「アイドル」の起源

アイドル(idol)の本来の意味は、偶像、すなわちなどの宗教的存在をかたどって造られた像で、かつ崇拝の対象となっているもののことである[5]。この用語が転用され、20世紀前半のアメリカで「若い人気者」としての意味で使われ始めた。

アメリカでは、戦前の1927年に「マイ・ブルーヘブン」をヒットさせた歌手のジーン・オースティン[6]や、1940年代に「女学生のアイドル(bobby-soxer's idol)」と呼ばれて熱狂的な人気を生んだフランク・シナトラらがidolと呼ばれ始めた[7]。その後、アネットやファビアン、ボビー・ライデル[8]らのアイドルが人気となり、マイケル・ジャクソンバックストリート・ボーイズなどもアメリカを代表するアイドルである。デビュー時のエルヴィス・プレスリー1950年代)やビートルズ(イギリス・1960年代)らは、日本でも「アイドル」として認知されていた[9]。イギリスでは、クリフ・リチャード、ベイ・シティ・ローラーズスパイス・ガールズらのアイドルが存在した。その後「若い人気者」という意味におけるidolという言葉は死語となり、iconpop starなどの言葉で置き換えられるようになっていった[10]

日本型「アイドル」の誕生

日本においては当初「アイドル」という言葉は、主に日本国外の芸能人を対象にした呼称として用いられ[11][12]、日本の人気芸能人は一般的に「スター」と呼ばれていた。

日本で最初のアイドルは、明日待子である[13][14]

テレビが登場する前の主力産業は映画だったことから、スターの大半は映画俳優であり、特に加山雄三吉永小百合浜田光夫らは「青春スター」と呼ばれた(東映ニューフェイスも参照)。女性においては美空ひばり吉永小百合らの時代であり、そのひばりに江利チエミ雪村いづみを加えた「三人娘」、あるいは、中尾ミエ伊東ゆかり園まりから成る「スパーク3人娘」らが人気を博した。

しかし、1960年代には、産業としての映画の衰退、本格的なテレビ時代の到来、グループ・サウンズのブーム[15]が巻き起こる過程で、徐々に「スター」と並行して「アイドル」の呼称が用いられるようになった[16]

1970年代に至り、未成熟な可愛らしさ・身近な親しみやすさなどに愛着を示す日本的な美意識を取り入れた独自の「アイドル」像が創造された[17]。また1968年に設立されたCBSソニー(現・ソニー・ミュージックエンタテインメント)が、それまでレコード会社が楽曲制作を自社の専属作家に任せていたのを、無所属の作家に開放したことが切っ掛けで、「アイドル歌謡」が隆盛するようになった[18]

その後、現在に至るまで女性アイドル産業が特に盛んな背景として、「元来女性は、男性にはない『感動しやすい習性』『精緻なる感受性』をもつがゆえに、巫女的な妹の力(いものちから)を得て、生きる力、幸福への道を伝えることができる」とする、民族学者・柳田國男の評論が持ち出されるケースがある[19]。なお、日本におけるアイドルの隆盛時期は、不況の期間とほぼ完全に一致している、という分析もある[20]

女性アイドル史