マンガン コバルト
-

Fe

Ru
Element 1: 水素 (H),
Element 2: ヘリウム (He),
Element 3: リチウム (Li),
Element 4: ベリリウム (Be),
Element 5: ホウ素 (B),
Element 6: 炭素 (C),
Element 7: 窒素 (N),
Element 8: 酸素 (O),
Element 9: フッ素 (F),
Element 10: ネオン (Ne),
Element 11: ナトリウム (Na),
Element 12: マグネシウム (Mg),
Element 13: アルミニウム (Al),
Element 14: ケイ素 (Si),
Element 15: リン (P),
Element 16: 硫黄 (S),
Element 17: 塩素 (Cl),
Element 18: アルゴン (Ar),
Element 19: カリウム (K),
Element 20: カルシウム (Ca),
Element 21: スカンジウム (Sc),
Element 22: チタン (Ti),
Element 23: バナジウム (V),
Element 24: クロム (Cr),
Element 25: マンガン (Mn),
Element 26: 鉄 (Fe),
Element 27: コバルト (Co),
Element 28: ニッケル (Ni),
Element 29: 銅 (Cu),
Element 30: 亜鉛 (Zn),
Element 31: ガリウム (Ga),
Element 32: ゲルマニウム (Ge),
Element 33: ヒ素 (As),
Element 34: セレン (Se),
Element 35: 臭素 (Br),
Element 36: クリプトン (Kr),
Element 37: ルビジウム (Rb),
Element 38: ストロンチウム (Sr),
Element 39: イットリウム (Y),
Element 40: ジルコニウム (Zr),
Element 41: ニオブ (Nb),
Element 42: モリブデン (Mo),
Element 43: テクネチウム (Tc),
Element 44: ルテニウム (Ru),
Element 45: ロジウム (Rh),
Element 46: パラジウム (Pd),
Element 47: 銀 (Ag),
Element 48: カドミウム (Cd),
Element 49: インジウム (In),
Element 50: スズ (Sn),
Element 51: アンチモン (Sb),
Element 52: テルル (Te),
Element 53: ヨウ素 (I),
Element 54: キセノン (Xe),
Element 55: セシウム (Cs),
Element 56: バリウム (Ba),
Element 57: ランタン (La),
Element 58: セリウム (Ce),
Element 59: プラセオジム (Pr),
Element 60: ネオジム (Nd),
Element 61: プロメチウム (Pm),
Element 62: サマリウム (Sm),
Element 63: ユウロピウム (Eu),
Element 64: ガドリニウム (Gd),
Element 65: テルビウム (Tb),
Element 66: ジスプロシウム (Dy),
Element 67: ホルミウム (Ho),
Element 68: エルビウム (Er),
Element 69: ツリウム (Tm),
Element 70: イッテルビウム (Yb),
Element 71: ルテチウム (Lu),
Element 72: ハフニウム (Hf),
Element 73: タンタル (Ta),
Element 74: タングステン (W),
Element 75: レニウム (Re),
Element 76: オスミウム (Os),
Element 77: イリジウム (Ir),
Element 78: 白金 (Pt),
Element 79: 金 (Au),
Element 80: 水銀 (Hg),
Element 81: タリウム (Tl),
Element 82: 鉛 (Pb),
Element 83: ビスマス (Bi),
Element 84: ポロニウム (Po),
Element 85: アスタチン (At),
Element 86: ラドン (Rn),
Element 87: フランシウム (Fr),
Element 88: ラジウム (Ra),
Element 89: アクチニウム (Ac),
Element 90: トリウム (Th),
Element 91: プロトアクチニウム (Pa),
Element 92: ウラン (U),
Element 93: ネプツニウム (Np),
Element 94: プルトニウム (Pu),
Element 95: アメリシウム (Am),
Element 96: キュリウム (Cm),
Element 97: バークリウム (Bk),
Element 98: カリホルニウム (Cf),
Element 99: アインスタイニウム (Es),
Element 100: フェルミウム (Fm),
Element 101: メンデレビウム (Md),
Element 102: ノーベリウム (No),
Element 103: ローレンシウム (Lr),
Element 104: ラザホージウム (Rf),
Element 105: ドブニウム (Db),
Element 106: シーボーギウム (Sg),
Element 107: ボーリウム (Bh),
Element 108: ハッシウム (Hs),
Element 109: マイトネリウム (Mt),
Element 110: ダームスタチウム (Ds),
Element 111: レントゲニウム (Rg),
Element 112: コペルニシウム (Cn),
Element 113: ニホニウム (Nh),
Element 114: フレロビウム (Fl),
Element 115: モスコビウム (Mc),
Element 116: リバモリウム (Lv),
Element 117: テネシン (Ts),
Element 118: オガネソン (Og),
Iron has a body-centered cubic crystal structure
26Fe
外見
銀白色
Iron electrolytic and 1cm3 cube.jpg
Iron Spectrum.jpg
鉄のスペクトル線
一般特性
名称, 記号, 番号 鉄, Fe, 26
分類 遷移金属
, 周期, ブロック 8, 4, d
原子量 55.845(2) 
電子配置 [Ar] 3d6 4s2
電子殻 2, 8, 14, 2(画像
物理特性
固体
密度室温付近) 7.874 g/cm3
融点での液体密度 6.98 g/cm3
融点 1811 K, 1538 °C, 2800 °F
沸点 3134 K, 2862 °C, 5182 °F
融解熱 13.81 kJ/mol
蒸発熱 340 kJ/mol
熱容量 (25 °C) 25.10 J/(mol·K)
蒸気圧
圧力 (Pa) 1 10 100 1 k 10 k 100 k
温度 (K) 1728 1890 2091 2346 2679 3132
原子特性
酸化数 6, 5[1], 4, 3, 2, 1[2], −1, −2
(両性酸化物)
電気陰性度 1.83(ポーリングの値)
イオン化エネルギー 第1: 762.5 kJ/mol
第2: 1561.9 kJ/mol
第3: 2957 kJ/mol
原子半径 126 pm
共有結合半径 132±3 (低スピン), 152±6 (高スピン) pm
その他
結晶構造 体心立方
磁性 強磁性
1043 K
電気抵抗率 (20 °C) 96.1 nΩ·m
熱伝導率 (300 K) 80.4 W/(m·K)
熱膨張率 (25 °C) 11.8 µm/(m·K)
音の伝わる速さ
(微細ロッド)
(r.t.) (electrolytic) 5120 m/s
ヤング率 211 GPa
剛性率 82 GPa
体積弾性率 170 GPa
ポアソン比 0.29
モース硬度 4
ビッカース硬度 608 MPa
ブリネル硬度 490 MPa
CAS登録番号 7439-89-6
主な同位体
詳細は鉄の同位体を参照
同位体 NA 半減期 DM DE (MeV) DP
54Fe 5.8 % > 3.1×1022 y εε ? 54Cr
55Fe syn 2.73 y ε 0.231 55Mn
56Fe 91.72 % 中性子30個で安定
57Fe 2.2 % 中性子31個で安定
58Fe 0.28 % 中性子32個で安定
59Fe syn 44.503 d β 1.565 59Co
60Fe syn 2.6×106 y β 3.978 60Co

(てつ、旧字体/繁体字表記:: iron: ferrum)は、原子番号26の元素である。元素記号Fe金属元素の1つで、遷移元素である。太陽や他の天体にも豊富に存在し、地球の地殻の約5%を占め、大部分は外核・内核にある。

概要

元素記号の Fe は、ラテン語での名称「ferrum」に由来する。日本語では、鈍いさから「くろがね(黒鉄、黒い金属)」ともいう。旧字体は「鐵」で、また異体字として「銕」がある。

ほとんどの元素は恒星の核融合によって作られるが、それは鉄までである。原子番号が鉄より大きい元素は、新星爆発などでしか生じない。地球にプラチナが存在するのは、超新星爆発の残骸が太陽系の材料であった証左である。

地球も地殻以外は鉄が主成分となっており、火山(特に溶岩や火山弾)やそれに伴う熱水鉱床に鉄が豊富に含まれるのは、地殻以外の成分のほとんどが鉄で出来ているからである。地磁気も、地球の核で溶融した鉄が地球の自転と異なる速度で回転することによって生じるとされている。

道具を作る用材として、石器時代青銅器時代に続く鉄器時代を形成し、地球人類文明の基礎を築いた。現在においても最も重要、かつ身近な金属元素の1つで、産業革命以降、益々その重要性は増している。様々な器具・工具や構造物に使われる。炭素などの合金元素の添加により、より硬いとなり構造物を構成する構造用鋼などや、工具鋼などの優れたトライボロジー材料にもなる。

性質

純粋な鉄は白い金属光沢を放つが、イオン化傾向が高いため、湿った空気中では容易にを生じ、時間の経過と共に見かけ上黒ずんだり褐色へと変色する。一方、極めて純度の高い (99.9999 %) 鉄は、比較的高いイオン化傾向を有するにもかかわらず、塩酸王水などのに侵されにくくなるうえ、液体ヘリウム温度(-268.95℃)でも失われないほどの高い可塑性を有するようになる[3]。この超高純度鉄東北大学金属材料研究所の研究グループらが、電解鉄を超高真空中で溶解電子銃を用いた浮遊帯溶融精製で処理することにより1996年に製造に成功し[3][4]2011年に日本とドイツの標準物質データベースに登録された[4][5]

固体の純鉄は、フェライトBCC構造)、オーステナイトFCC構造)、デルタフェライト(BCC構造)の3つの多形がある。911 ℃以下ではフェライト、911 - 1392 ℃はオーステナイト、1392 - 1536 ℃はデルタフェライト、1536 ℃以上は液体の純鉄となる。常温常圧ではフェライトが安定である。強磁性体であるフェライトがキュリー点を超えたところからオーステナイト領域までの770 - 911 ℃の純鉄の相は、以前はβ鉄と呼ばれていた。

栄養学の立場からみると、鉄は(生体)にとって必須の元素である。食事制限などで鉄分を欠く時期が続くと、血液中の赤血球数やヘモグロビン量が低下し、貧血などを引き起こす。で吸収される鉄は二価のイオンのみであり、3価の鉄イオンは2価に還元されてから吸収される。鉄分を多く含む食品はホウレンソウレバーなどである。動物性の食物起源の鉄の方が吸収効率が高い。ただし、過剰に摂取すると鉄過剰症になることもある。

同位体

自然の鉄の同位体比率は、5.845 %の安定な54Fe、91.754 %の安定な56Fe、2.119 %の安定な57Fe、0.282 %の安定な58Fe からなる。60Fe は不安定で比較的短寿命(半減期150万年)なため、自然の鉄中には存在しない。理論的に予測される54Fe の二重β崩壊の検出は未確定である[6]58Fe と56Fe の原子核は非常に安定(核子1つあたりの質量欠損が大きい)であり、全ての原子核の中でそれぞれ2番目と3番目に安定である(最も安定な核種は62Ni)[7][8]

しばしば全ての原子核の中で56Fe が最も安定とされることがあるが、これは誤りである。このような誤解が広まった理由として、56Fe の天然存在比が62Ni や58Fe よりもはるかに高いことに加え、核子1つあたりの質量を比較した場合には56Fe が全原子核中で最小となることが挙げられる。中性子の方が陽子よりもわずかに重いため、核子1つあたりの質量が最小となる核種と質量欠損が最大になる核種は一致しない。また、下記のように恒星の核融合の最終生成物が56Fe であることを「鉄が最も安定であるため」と便宜的に説明されることがあることも誤解を招いていると考えられる。

58Fe よりも不安定な56Fe のほうが存在比が高い理由は、星の元素合成の過程で質量数が4の倍数の核種が主に作られるためである。炭素より重い元素は4He の融合(アルファ反応)によって作られるために生成する核種の質量数は4の倍数に偏る。太陽質量の4 - 8倍の質量を持った恒星ではアルファ反応は56Ni まで進行するが、次の60Zn の原子核は56Ni よりも不安定なため、これ以上は反応が進行しない。56Ni は2度のβ崩壊を経て56Fe を生成するため、恒星の核融合の最終生成物は56Fe になる(詳しくはIa型超新星参照のこと)。鉄より重い核種も超新星爆発等であわせて生成するが、その生成プロセスは明確になっていない。

鉄の「臭い」

鉄棒などの鉄製品を手に持つと、手に特有の臭いが付く。これは俗に「金属臭」、「鉄の臭い」と呼ばれるが、原因は鉄そのものではない(鉄は常温では揮発しない)。研究により、人体のに含まれる皮脂分解物と鉄イオンが反応して生じる炭素数7-10の直鎖アルデヒド類や1-オクテン-3-オンなどの有機化合物、そしてメチルホスフィンジメチルホスフィンなどのホスフィン類がこの臭いの原因であることが確認されている[9][10]

用途

セヴァーン川にかかるアイアンブリッジ。世界初の鉄橋とされる。

安価で比較的加工しやすく、入手しやすい金属であるため、人類にとって最も利用価値のある金属元素である。特に産業革命以後は産業の中核をなす材料であり、「産業の米」などとも呼ばれ、「鉄は国家なり」と呼ばれる程、鉄鋼の生産量は国力の指標ともなった。この為、鉄鋼産業には政府の桿入れも大きく、第二次世界大戦後の世界的な経済発展にも大きく影響している。現在においても工業生産されている金属の大半は鉄鋼であり、鉄を含まない金属は非鉄金属と呼ばれる。

鉄は、炭素をはじめとする合金元素を添加することでとなり、炭素量や焼入れなどを行うことなどで硬度を調節できる極めて使い勝手の良い素材となる。鋼は古くから刃物の素材として使われ、ほとんどの機械は鉄鋼を主な素材とする。さらに鉄鋼は、鉄道レールの素材となるほか、鉄筋鉄骨、鋼矢板などとして建築物土木構築物の構造用部材に使われ大量に消費されている。

ステンレス

鉄に炭素とさまざまな微量金属を加えることで、多様な優れた特性を持つ合金鋼が生み出される。 鉄とクロムニッケルの合金であるステンレス鋼は腐食しにくく強度が高く、なおかつ見た目に美しく比較的安価な合金として知られる。このため、ステンレス鋼に加工された鉄は、液体や気体を通すパイプ、液体や粉体を貯蔵するタンク流し台、建築資材などにも用いられるほか、包丁などの生活用具、家電製品、鉄道車両自動車部品、産業ロボットなど、あらゆる分野に利用されている。

工具鋼、他

工具鋼は固体材料の中で最も強度増幅能力が高く超硬材料と比べても高い曲げ強度を有するため、不変形特性が重要でかつ加工形状の自由度が要求される金型に多用される。金属材料で最も熱膨張係数が低いインバー、最強の保磁力を持つ磁性材料(ネオジム磁石)も鉄を含む。他にも、鉄化合物インク絵具などの顔料として、赤色顔料ベンガラ青色顔料のプルシアンブルーなどとして使われる。

鉄は強い磁性を持つため、不燃物からの回収が容易であり、再利用率も高い。屑鉄として回収された鉄は、電気炉で再び鉄として再生される。

製法

産出

大規模な鉄鉱床は、光合成により酸素単体が大量に発生したことにより、海水中に溶存しイオン化していた鉄が、酸化鉄として沈殿したことにより産み出されたと言われている。

選鉱

製錬

宋応星が著した「天工開物」の1頁。攪拌精錬法による製鉄方法を解説している。

鉄の製錬はしばしば製鉄と呼ばれる。簡単に言えば、鉄鉱石に含まれる様々な酸化鉄から酸素を除去して鉄を残す、一種の還元反応である。アルミニウムチタンと比べて、化学的に比較的小さなエネルギー量でこの反応が進むことが、現在までの鉄の普及において決定的な役割を果たしている。この工程には比較的高い温度(千数百度)の状態を長時間保持することが必要なため、古代文化における製鉄技術の有無は、その文化の技術水準の指標の1つとすることができる。

製鉄は2つ、もしくは加工まで加えた3つの工程からなる。鉄鉱石とコークスから炭素分の多い銑鉄を得る製銑、銑鉄などから炭素を取り除き炭素分の少ないを作る製鋼、さらに圧延である[11]。製銑には古くは木炭が使われていたが、中国では、前漢時代に燃料として石炭の利用が進み、さらに石炭を焼いて硫黄などの不純物を取り除いたコークスを発明、コークスを使った製鉄が始められた[12]。文献記録としては4世紀北魏でコークスを使った製鉄の記録が最も早い[13]。以来、華北では時代と共にコークス炉が広まり北宋初期には大半がコークス炉となった。その1000年以上の後、森林が減ったことから1620年頃にイギリスのダッド・ダドリー英語版 (Dud Dudley) も当時安価に手に入った石炭を使うことを考えて研究を進めた。石炭には硫黄分が多く、そのままでは鉄に硫黄が混ざり使い物にならなかったので、ダッドは石炭を焼いて硫黄などの不純物を取り除いたコークスを発明し、1621年にコークスを使った製鉄方法の特許を取った。しかし1709年からエイブラハム・ダービー1世英語版が大々的にコークスで製鉄することを始めるまでは、コークスを使った製鉄の使用は少数にとどまっていた[14]

日本では古来からたたら吹き(鑪吹き、踏鞴吹き、鈩吹き)と呼ばれる製鉄技法が伝えられている。現在では島根県安来市の山中奥出雲町等の限られた場所で日本刀の素材製造を目的として半ば観光資源として存続しているが、それと並存し和鋼の進化の延長上にもある先端的特殊鋼に特化した日立金属安来工場がある。

韮山反射炉などの試行はあったが、鉄鉱石を原料とする日本の近代製鉄は1858年1月15日旧暦1857年(安政4年)12月1日)に始まったと言われ(橋野高炉跡[15]幕末以降欧米から多数の製鉄技術者が招かれ日本の近代製鉄は急速に発展した。現在の日本では、鉄鉱石から鉄を取り出す高炉法スクラップから鉄を再生する電炉法で大半の鉄鋼製品が製造されている。高炉から転炉連続鋳造工程を経て最終製品まで、一連の製鉄設備が揃った工場群のことを銑鋼一貫製鉄所(もしくは単に製鉄所)と呼び、臨海部に大規模な製鉄所が多数立地していることが、日本の鉄鋼業の特色となっている。日本では電炉法による製造比率が粗鋼換算で30 %強を占める。鉄が社会を循環する体制が整備されており、鉄のリサイクル性の高さと日本における鉄蓄積量の大きさを示している。鉄スクラップは天然資源に乏しい日本にとって貴重な資源であり、これをどう利用するかが、注目されるべき課題とされている。

なお第二次世界大戦後には高炉内壁の磨耗を調べるために、使用する耐火煉瓦放射性物質コバルト60を混入して産出する鉄製品の放射線量を測定する手法が用いられており、このため戦後生産された鉄製品が微量な放射線を測定する際に影響を及ぼすため、戦前に生産された鉄を原料とするシールド材が用いられる。大戦時に建造された軍艦が主な供給源であり、日本では陸奥から回収した「陸奥鉄」が有名である。

新製鉄法

イギリスのコークス炉を用いた製鉄工場の絵。フィリップ・ジェイムズ・ド・ラウザーバーグ画(1801年)
製鉄百年記念切手 (日本)

従来の高炉法の場合、下記の欠点があった。

  • 銑鉄を製造するだけでも高炉のほかにコークス炉(石炭を乾留)・焼結炉が必要であり、また反応速度も8時間かかり、巨大設備投資が必要な割りに生産量が少ない。
  • コークスを製造できる石炭は石炭の中の極一部である粘結炭(原料炭)だけであり、もともと価格が高かった。近年資源メジャーによる原料炭鉱山の買占めのため、単年度で原料炭価格が2倍に上昇するなど大きなコスト上昇要因となっている。高炉法に羽口からの非粘結炭(一般炭)吹き込みを併用しても、価格の安い一般炭の使用比率は全石炭使用量の25 - 30 %程度が限界である。
  • 鉄鉱石価格は塊鉱石が高価で粉鉱石が安価であるが、高炉で粉鉱石を使う場合焼結炉で塊に焼き固めなければならない。その結果、焼結炉が必要で焼結工程で燃料を消費してコストが掛かるのみならず二酸化炭素を発生させてしまう。
  • 酸素濃度を多少増やす工夫もされているが基本は空気を吹き込む製鉄法である。
    溶融還元製鉄法
    溶融還元炉では粉状の一般炭を酸素吹きで燃焼させ高温の一酸化炭素ガスを発生させ、予備還元した粉鉄鉱石を一気に還元し溶かして溶けた銑鉄を造る。溶融還元炉を出た一酸化炭素ガスは流動床/回転炉/シャフト炉で鉄鉱石を予備還元する。予備還元炉を出た一酸化炭素ガスは石炭乾燥空気の加熱などを経て、発電やスラブの再加熱、化学原料などに使用される。
    利点
    • コークス炉、焼結炉が不要で、反応速度が速く比較的小さな溶融還元炉で大きな生産能力を持つために製鉄所新設の設備投資が高炉法より安くつく。
    • 一般炭100 %使用可能なため、資源メジャーの原料炭値上げで大きな損害を出さなくて済む。製鉄だけを目的とするなら半無煙炭などの炭素含有量の高い石炭を使えば、投入原単位を節約できるが、副生ガスを化学工業原料として販売できる立地なら、より安価な高揮発分石炭でガス産出を増やす事もできる。
    • 予備還元炉の一部に流動床回転炉を使えば、安価な粉鉱石も使える。
    • 酸素製鉄の場合、発生する還元ガスである一酸化炭素に窒素が混入しないため、燃料としてもカロリーが高いばかりでなく、C1化学の出発原料である合成ガスとして活用できる。日本の製鉄石炭消費は年間1億tに及び、その排ガスを活用してフィッシャー・トロプシュ法軽油を生産したり、メタノールを生産した場合数千万tの自動車燃料を自給できる可能性があると言われている。
    • 鉄ガス併産・化学とのコプロダクション[16]
    課題
    • 日米欧とも上流設備は過剰気味である。日米欧とも鉄鋼需要は大きな成長はない。需要の増大している中国インドでは国産鉄鋼の価格が安く冷延鋼板より上流の製品では日米欧製品は価格が高すぎて売れないので、日本鉄鋼メーカーの設備投資は亜鉛/メッキ鋼板設備など下流高級用途に集中している。中国では熱効率が悪く二酸化炭素排出が多い中小高炉が乱立する様相を示しており、地球環境の視点からは、製鉄企業の適正な合併指導と新製鉄法の技術供与が望まれるが、それは中国インド産鋼鉄の価格競争力を高め、日本産鉄鋼の価格競争力が地盤沈下するブーメラン効果の原因ともなりうる。
    • 鉄鋼会社が溶融還元法に転換すると、現在コークスを鉄鋼企業に納品している企業はコークス炉の経営が立ち行かなくなる。そのため、現在稼動中のコークス炉が40年の寿命を迎える2015年まで溶融還元製鉄の導入は困難と見られていたが、昨今の原料炭価格の急激な上昇、韓国浦項総合製鉄の溶融還元製鉄炉操業開始など、切替え前倒しが必要になるかもしれない事象が起きている。
    • 技術的には酸化鉄による炉壁の溶損の解決が課題の一つのようである。
    • 酸素製鉄法は膨大な酸素を消費する。東京湾伊勢湾大阪湾のような液化天然ガスの大消費地であれば液化天然ガスの冷熱利用で低コストに酸素を量産できる可能性があるが、そうでない場合、空気の分留によって酸素を製造するのに多大な電力を消費する。
    炭材内装塊の高速自己還元技術
    粉炭と粉鉱石を加熱成型した塊を高炉に装填した場合、コークスと塊鉱石を交互装填した場合の5倍の速さで還元反応が進む。また同様の混合ペレットを溶融還元炉に使用した場合、炉壁溶損原因となる FeO の溶出が3 %で済むという。回転炉によるITmk3法も後述のフロートスメルター法も同技術を使用しているとのこと。
    フロートスメルター法
    粉炭に窪みを作り、粉炭と粉鉱石と石灰を混合したものを窪みに充填し周囲の石炭を燃焼して加熱する。
    特徴
    • 50万トン/年規模の小型プラントに適する。炭素の酸化発熱は炭素>一酸化炭素より一酸化炭素>二酸化炭素の発熱量が大であり、石炭を CO2 まで酸化することで石炭の使用原単位が減り、CO2 の半減効果が得られる。ただし、発生するガスは二酸化炭素なので化学合成には使えない。

鉄利用の歴史

古代

今のところ製鉄技術が普及し始めたのは紀元前25世紀頃のアナトリアと考えられているが、鉄の利用自体はそれよりも古い。メソポタミアでは紀元前3300年から紀元前3000年頃のウルク遺跡から鉄片が見つかっている。また、エジプトゲルゼーからも、ほぼ同時期の装飾品が見つかっている。これらの鉄器はニッケルの含有量から隕鉄製と考えられている。鉄利用の開始はさらに有史以前に遡ると思われるが、詳細はわかっていない。カマン・カレホユック遺跡アラジャホユック遺跡、紀元前20 - 18世紀頃のアッシリア人の遺跡からも当時の鍛鉄が見つかっている。

古代・中世前期日本

鉄器は紀元前3世紀青銅とほぼ同時期に日本へ伝来した。当初は製鉄技術はなく輸入されていた。

青銅は紀元前1世紀頃から日本で作られるようになり、製鉄は弥生時代後期後半(1 - 3世紀)頃から北部九州のカラカミ遺跡壱岐市)や備後の小丸遺跡(三原市)で開始され、それから時代が下り出雲地方や吉備でも製鉄が行われるようになった。総社市の千引かなくろ谷遺跡は6世紀後半の製鉄炉跡4基、製鉄窯跡3基が見つかっている。鞴(ふいご)を使い、原料は鉄鉱石である。製鉄炉の作り方は、朝鮮半島からの導入と推定されている[17]

日本の製鉄法はある時期以降は「たたら」と呼ばれる一種の鋼塊炉 (bloomery) を用いた、砂鉄を原料とする直接製鉄法である。直接製鉄法とは、砂鉄または鉄鉱石を低温で還元し、炭素の含有量が極めて低い錬鉄を生成するもので、近代の製鉄法が確立する前は(漢代以降の中国などの例外を除いて)広く世界的に見られた方法である。日本の製鉄法の特色は、鉄の含有量が高い砂鉄を原料に用いていることであろう。古代、中世においては露天式の野だたら法が頻繁に行われていたが、16世紀中葉から全天候型で送風量を増加した永代たたら法に発展した。この古代以来の日本独自のたたら製鉄法では、玉鋼や包丁鉄といった複数の鉄が同時に得られるために、それが後の日本刀を生み出す礎となった。以後、出雲は一貫して日本全国に鉄を供給し、現在でも出雲地方にその文化の名残が認められ、日立金属などの高級特殊鋼メーカーへと変貌を遂げている。

農具が鉄器で作られるようになると、農地の開拓が進んだ。中世日本では鉄は非常に貴重であり、鉄製の農機具政府の持ちもので、朝借りて来て夕方には洗って返すことになっていた。私有地の耕作には鉄の農機具を使う事ができなかったため、良い農地は政府の所有であった。すなわち、中世の日本の貴族は鉄の所有権を通して遠隔地にある荘園を管理した[18]

11世紀頃から鉄の生産量が増えると、鉄が安価に供給されるようになった。個人が鉄の農機具を持つ事ができるようになると、新しい農地が開墾されるようになった。

中世後期・近世日本

暦応5年(1342年)鋳物師の認可状 巻末

戦国時代にあった日本では、1550年代頃に銃器の生産が普及した。鉄の技術者は鍛冶師、鋳物師と呼ばれた。また、永代たたらの普及により生産量が爆発的に増加したため、生産性の観点から歩止まりの良い砂鉄が採れる中国地方や九州地方への産地の集中が進むこととなった。

当時、鉄の精錬には木炭が使われた(ただし、宋代以降の中国においては石炭の利用が始まる)。日本の森林は再生能力に優れ、幸いにも森林資源に枯渇することが無かった。豊富な砂鉄にも恵まれており、鉄の生産量と加工技術では世界で抜きん出た存在になった。

中世後期から江戸時代にかけて、刀剣は輸出商品として長崎から輸出された。輸出先は中国やヨーロッパである。今日でもヨーロッパ各地の博物館で当時の貴族たちが収集した日本刀を見ることができる。は一貫して日本との交易を禁じる政策を取ってきたが、鄭若曽の『籌海図編』には倭寇が好んだもの(倭好)として「鉄鍋」が挙げられ、謝杰の『虔台倭纂』には「鉄鍋重大物一鍋価至一両銭、重古者千文価至四両、小鍋曁開元永楽銭二銭、及新銭不尚也」(上巻「倭利」)として記し、日本人が小鍋でも永楽銭2銭を出して手に入れようとした事が記されている。これについて、太田弘毅16世紀に西日本、特に倭寇とのつながりが強い瀬戸内海沿岸や九州に新興の日本刀産地が発生していることを指摘し、戦国時代に増大する日本刀需要(軍事的、あるいは密輸出用として)を賄うために中国から鉄鍋などの中古の鉄を獲得したと論じる[19]。また、16世紀の明の人で倭寇事情を調べるために日本を訪れて帰国後に『日本一鑑』を著した鄭舜功によれば、「其鉄既脆不可作、多市暹羅鉄作也、而福建鉄向私市彼、以作此」(巻二「器用」)と述べて日本の鉄砲に使われていた鉄がシャムや福建からの密輸品(収奪を含む)であったことを指摘している。さらに近年において佐々木稔らによって行われた日本産の鉄砲などに用いられた鉄の化学分析によれば、日本の砂鉄には含まれていない銅やニッケル、コバルトなどの磁鉄鉱由来成分の含有が確認されており、佐々木は近世以前の日本国内において磁鉄鉱の鉱床開発が確認できない以上、国外から輸入された銑鉄などが流通していたと考えざるを得ないと指摘する[20]

壊れた鉄製品を修復する需要があり、鉄の加工技術は日本各地で一般化していった。鍛接・鋳掛けの他にも、金属の接合にはろう付けリベットが使われた。

鋳物業の盛んな富山県高岡市にも鋳物師の伝統である高岡銅器があり、この地域には古い技術がよく伝承されている。現在でもYKK新日軽といった金属加工関係の大企業の工場が富山県に多くあるのはこの伝統と無縁ではない。江戸幕末には、艦砲を備えた艦隊の武力を背景に開国を迫る西洋に対抗するために、大砲鋳造用の反射炉が各地に建造された。これらは明治時代になるとより効率の良い高炉にとって代わられた[21]

近世ヨーロッパ

鉄を生産しているところでは森林破壊が深刻で、16世紀に鉄の生産が増加したイギリスでは、17世紀には鉄生産のための森林破壊が深刻となって木炭が枯渇し始め、製鉄の中心地だったウィールドでは17世紀末になると生産量が盛時だった17世紀前半の半分以下まで落ち込み、18世紀中葉には1/10まで減少した。18世紀後半にはダービーコークスを使った精錬が始まる。コークスは石炭を蒸し焼きにしたもので、不純物が少なく鉄の精錬に使うことができ、火力も強かった。コークスの発明により木材資源の心配がなくなり、鉄の生産量も増加した。

主な化合物